クラスター

= Dr.ウエノの保険コラム =

新型コロナウイルス問題で、「クラスター」というワードがメディアに良く出てくるようになりました。「集団」とか「群れ」という意味で、今回は一部地域で「患者クラスター」が発生しているとして政府が使っています。ダイヤモンド・プリンセス号や屋形船、スポーツジム、大阪のライブスタジオなどの狭い限定的な空間で一緒にいた人たちは「クラスター感染=集団感染」とされています。

この「クラスター」というワードは、記憶が定かではありませんが、たぶん25年くらい前から保険業界では使われていました。

保険業界での使い方は、「親」代理店の下に傘下「子」代理店を持たせるという意味で使われていました。親代理店が子代理店を作り、教育・指導し、成果が出るよう指導しますので、保険会社社員の手間は全く必要ありません。この社員にかかる費用等が、親代理店の子代理店に対する指導・管理フィーとして支払われていました。子代理店が契約を取ると、同じ手数料が親代理店に入るといったものが当時は通常フィーで、社員数の少ない外資系保険会社が業績拡大させるために作った制度になります。

子代理店が活躍しないと親代理店の収益になりませんので、人を選んで子代理店にして、教育には相当力を注いでいました。当然、親代理店はより収益につながる保険会社の特定商品を軸に販売指導していましたので、特定商品を販売するためのトークスクリプトを徹底して教育していて、今の比較推奨などは全くなかった時代だと思います。

中には子代理店が孫代理店まで作って、ねずみ講みたいな組織になったところもありますが、昔はこんな制度を使って、特に訪問販売系代理店は拡大していきました。

今は保険業法改正等もあり表面的には無くなった形になっていますが、実態はまだまだ改善されているとは言えないと思っています。

こうした形態の保険代理店は「業務品質」という観点から言えばきちんとできているところは少ないと思います。

今年1月に新聞報道された「乗合代理店に支払う販売手数料に関する業界共通の基準を採り入れる」ということを生命保険協会はいよいよ取り組むようですので、「規模」ではなく「業務品質」で代理店評価を統一し、過度な販売促進が是正されると思います。

その中でも「内部管理の状況」は評価の大きなポイントだと考えます。

金融庁は自社商品の販売が有利になるような評価の仕組みを問題視しており、生保業界に改善を求めています。乗合代理店に支払う手数料について、金融庁は今年度の行政方針で「比較推奨に偏りが生じないよう、合理的なものとしていくことが重要」と課題に掲げています。顧客本位を徹底するために生命保険協会が如何に統一基準を作れるかが今後の保険業界の適正化・健全化につながると思いますので、頑張って欲しいと思います。

懐かしい「クラスター」というワードから、今日は昔を振り返ってみました。